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バイエルの指導法は古いって本当?
ピアノの入門教材として代表的な教材として「バイエル」の名前は日本人にはとても有名なものです。ピアノは全く知らない人でも「バイエル」という名前と、バイエルがピアノの入門書であることはご存知の方も多いと思います。
ところが近年では、ピアノの入門書としてバイエルが使われることが以前ほど多くはなくなってきているというのが現状のようです。事実、私が25年以上前、ピアノを教え始めた当初は「バイエル教本」をメイン教材として使っていました。ところが今はバイエルは使っていません。また他のピアノ教室から移動されてこられる生徒さんもこれまでに大勢いましたが「バイエルを使っていました」という生徒さんはほとんどいらっしゃいませんでした。
今回は、ピアノの教育機関において、なぜ「バイエル」という教本が使われることが少なくなってきたのか?管理人・Minnaの独断(と偏見?)もかなり多くなってしまうとは思いますが、これについて言及してみたいと思います。
バイエルの前半は、ト音記号の指練習ばかり。そして曲がとても少ない。
バイエルと一言で言っても、実は「標準版・バイエル」「こどものバイエル上巻・下巻」「こどものバイエル・ミッキーといっしょ」など、同じバイエルでも出版社や編纂者によって装丁が中身が若干違っています。ここでは、全てを「バイエル」とみなしてのお話とさせていただきます。
バイエルの場合、最初に出てくる音符が「ト音記号」だけです。「こどものバイエル・上巻」の場合だとほとんど終わりの場所まで「ヘ音記号」が出てきません。大人・子供にかかわらず、ト音記号しか勉強していないと「ト音記号」を読むのは得意になりますが、「ヘ音記号」になった途端に「つまづいてしまう」という場合が多かったのです。
また、バイエルの上巻だけに関していうと、バイエルの中に出てくる曲が「曲」というよりも、とても「練習曲」の要素が強く、楽しくとか美しくとか明るく、悲しくと言った曲想表現ができるような曲は出てきません。いうなれば、指の体操のような練習曲ばかりなのです。
誤解していただきたくないのは、これが悪いと言っているわけではありません。何か、他の曲集などと併用して使うことでその部分を補うこともできますし、中には、このスタイルがとても合うという学習者もいると思うので、何とも言えませんが、少なくとも私が指導者として使ってきた教本としては「生徒さんの食いつきがあまりよくなかった」というのが本当のところです。(私の指導力がなかったという部分もあるのかもしれませんが・・)
バイエル後半は、進度が早く、理解・マスターするのに充分な教材が含まれていない
バイエル上巻だけしか学習しない状態でバイエル下巻に入ると、今度はヘ音記号がものすごく多く、この先に進むのにペースダウンしてしまう生徒が多かったのも事実です。
生徒は、自分自身の中にある程度「自分が進んでいる」「自分は出来るようになっている」という感覚を持つことが出来ないと「レッスンが楽しい」と感じなくなってしまう場合が多いです。そういう意味でもペースダウンはあまり良い影響は与えません。
また、下巻からの内容がものすごい勢いでレベルアップしていくので、これについていくのはとても大変なことだとも言えるでしょう。(もちろん、その生徒にもよりますが)
正直、もうちょっと1つのテーマを短くして、課題ごとの練習曲が多く作られているとマスターしやすいのではないかと思うのですが、後半に行けばいくほど(特に16分音符の理解や付点の理解の部分など)、たったこれだけの課題でマスターするのは難しいだろう・・と感じてしまうのです。
バイエルの最終部分は、とてもきれいで美しい曲が多いがタイトルがない
最後に、私がいちばん気になっている部分、それは曲にタイトルが付いていないことです。
全ての練習曲には番号がつけられていますが、残念ながらその曲に「タイトル」がついていません。
同じ曲でも「タイトルが付いていない曲」だと、演奏者がその曲を演奏して作り上げる時に膨らませるイメージに限界が出来てしまいます。特に初心者の場合は(大人・子供に限らず)音の並び方だけで曲をイメージするのはとても難しいので、「タイトルが付いている」ということは、曲のイメージがつけやすく演奏しやすくなるというのも事実です。
海外ではバイエルではなく、トンプソン、バルトーク、メトードローズ、クローバーなどが主流に使われている。
なんとなく、ピアノ=バイエルのイメージが強いのですが、この背景には日本は戦前からドイツととても仲が良かったので、バイエル→ドイツの教本というところから日本にはバイエルが広まったものと考えられます。(第2次世界対戦も日本とドイツは同盟国でしたし・・)
ところが、バイエルというのは、本当にドイツの本であってヨーロッパ全土がバイエルを使っていたわけではないのです。
実は、数年前に中欧(オーストリア・チェコ)に旅行に行き、その際にブダペストにある「バルトーク記念館」にも立ち寄ったのですが、その時に記念館のスタッフにピアノ教育について聞いてみたところ、その地方では昔から子どもの頃からバルトークのピアノ教本が主流で使われているとのこと。
同じように、トンプソン(アメリカ)、カバレフスキー(ソ連)、メトードローズ(フランス)など、ピアノの初級教本も国によって様々です。日本でもYAMAHAさんやKAWAIさんといった楽器メーカーも独自の教材を発売しています。
教本にこだわらず、その生徒にあった指導ができる教材を選ぶ
ここからは私の個人的な意見です。
正直、私は教本は何でも良いんじゃないかと思っています。教本なんてどうでも良いので「その生徒がその内容をマスターできるということ」がいちばん大切なことなんじゃないかと思っています。どんなに素晴らしい教本でも、「やった」というだけで「中身をマスター」出来ていなければ意味がないのです。この内容については、また別の機会に別の記事として書こうと思います。
指導者(先生)として出来ることは、「私はこの教材を使います」と決めてしまうのではなく、「この生徒にはどういうやり方なら伸びるか?」と考えるべきなんじゃないかな・・と思っています(若い頃からそう思えたわけではありません。歳を経て、そうなってきた感じです)。
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あなたがピアノで幸せになるのを応援しています。
今日も訪れていただきありがとうございます。
こんなところに書き散らしてすみません。
痛く、共感いたしました。
いろいろ使ってみましたが、教材選びは個々人に合わせて・・・・というくだり、実感いたします。
そうでなければ、なんのための「個人レッスン?」と、思ってしまいます。
ですね・・(^^)